57回目の結婚記念日ケーキと頑張る女子ケーキ。 : スイーツ・ナチュラリストpanipopoの美・食ラボ

ほぼ同時にこの２つのケーキを作ったことは偶然なのかもしれないけれど、私にどちらも大きな影響があるケーキでした。ちょこっと愛することについて、考えさせられたケーキでした。ひとつは誕生日のケーキ、もうひとつは長年連れ添った老夫婦の57回目の結婚記念日のケーキです。

去年の秋にやはり今回と同じくお母様から娘さんの誕生日に頼まれたケーキは、今年はバラの味わいが入った元気色に。お母様から娘さんを見たら、コスモスの花と表現されるお嬢さんは、バラの花が好きらしくて、このケーキもそんな味わいでまとめてみました。ピーチ＆フロマージュブラン、フランボワーズ、アールグレイ＆ダークチョコのクリーム、ローズのババロアで。

去年の秋にお母様から、娘さんのことをごくわずか聞いていたのですが、その娘さんが突然5月ごろひとりでうちにお見えになりました。これから学校に通って、新しく資格を取って過去の辛いことを乗り越えて、頑張っていくつもりだということを直接、本人の口から聞きました。

やっと私と会う（怪しい日本語をあやつりますが、フツーの人間です、私。なので誰も何の資格もいりません、私に会うのは。笑）気構えが出来たとのことでした。

彼女の話を聞くと、思わず私も悲しくなったことを今でも覚えています。8年前に愛するだんな様と突然、死別した彼女は、その悲しみを長い年月をかけて家族や周りの友達や皆さんに支えられて乗り越えて来たこと…

清楚で美しい女性の涙に曇る瞳を見ると、思わず小さなときの自分に戻りました。

私は2歳半で実父と死別しているのですが、とてもかわいがってくれた父を亡くすということは私にとって相当な打撃だったようです。小学生なのにひとりで墓地に行っては、父の墓前で過ごすという変わった子でした。

その父も私が不憫だったに違いありません。なぜなら、私が大学を卒業するまで頻繁に私の夢に出て来たからです。それが、独り立ちできるようになったら、いつの間にか、父の夢は見なくなりました。それ以来、1度もです。

親の愛、そして配偶者への愛、いろいろな愛情がありますが、生死を分けても見えない絆で結びついているような気がします。だから、悲しみを乗り越えて頑張ろうと思う彼女に今年は明るい色でケーキを作りました。

ローズ好きな彼女のためにバラのモチーフで。勝気そうなマトリョーシカは、これから頑張るという彼女の決意を表わすように（実際の彼女は、優しい女性らしい人です）してみました。黄色は元気色、そしてラベンダーとピンク好きな彼女のために、その系統でまとめてみました。

きっと、だんなさまも天国で見守っていてくださると思います。

こちらは、チョコレートの好きなお父様を持つ娘さんが、ご両親の57回目の結婚記念日のために依頼されたものです。

ダークチョコレート、栗、クスミティーで合わせた層を複雑に絡ませて、上の部分にちょこんとカシスムースを乗せてみました。

海と音楽の好きなお父様、編み物の好きなお母様とお聞きしましたので、57回目の結婚記念日のケーキを表わすクッキーは、お父様の好きな海の風景を作り出す、お母様の毛糸ワークという感じで仕上げました。

57年も連れ添えるということは、素晴らしいことです。だから、そんなニュアンスも込めて。長い夫婦の愛情を表現してみました。

後ろには、お二人の長い人生のタペストリーみたいなものを。人生は様々で、いろんなことがあるけれど、でも愛する人と一緒にいることが出来るということは、なんて心強いのでしょうか。それが海を越えたところにいる家族でも、あるいはペットのネコでも。

いろんなことをケーキ上で表現できるのは、楽しくも責任のある仕事だな、って思います。

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