44727209.jpg


寒い冬が来て、あるご招待があった。私たちの勉強のためにと、恵比寿のシャトー(ロブション)のランチにある『足長お姉さん』が連れて行ってくださることになった。ちょうど1月はpaniヴァンの誕生月。そのお祝いにと、粋な計らいをしてくださった。これをにんじんに、12月をあっと言う間に走り抜けて1月下旬に恵比寿まで。

私の人生、今まで何人の足長おじさんやお姉さんがいたことか… とりわけ目上の方に、どういうわけか可愛がられるので、いろいろと助けられたり、美味しいものを食べに連れて行ってもらったり。もちろん、それは私の、自分の支払った頑張りに対してのご褒美という形だった。今回は、このAさんの心が広く、どうにか私たちを学ばせてあげようという優しい気持ちからの招待だと思う。

ロブションは、もちろんミシュラン3つ星だから、やはり期待感大。恵比寿駅を抜けて、ほら着いた。

robuchon2

これ以前に、最後に3つ星に招待されたのは、パリ時代。あるブラッサリーで、少しの間、無給で働いていた。ここは、ある紹介でひょんなことから、パティシエ見習いとして遊びに行くような感じだったのだけれど、グランド・メゾンのひとつ、ルドワヤンの当時のシェフやシェフ・パティシエが毎週のように来ては食べて飲んでいくところだったので、超一流のシェフたちを間近に見、話したりする機会もあった。本当はそのルドワヤンに研修に行くことが決まっていたけれど、私は土壇場でオテル・ド・クリヨンに変えてもらったから人生とは分からないもの。もし、ルドワヤンに行っていたら、今、私は日本で仕事なんてしていなかったはず。もちろんpaniヴァンに会うこともなかった。

パリの15区にあるブラッサリーレストランの、ウナギの寝床のような狭く長いキッチンで、3ヶ月ほど働くことになった。ここはシェフともうひとりの料理人でやっていたところだけれど、シェフはバスク出身。料理もバスク料理。2人が細長く狭いキッチンに立つと、誰も通れないほどだった。そこに私が入り込み、小さな食器洗い機の前に陣取り、次々と運び込まれる使用済みの食器やカトラリーを食洗機に入れたり、出したり、デザートプレートの仕上げをだんだんと任されるようになっていった。

美味しくて、とても人気のあるレストランだったので、いつも満席。大通りから路地1本入ったところにあって目立たないけれど、シェフの人柄もあって、いつも混んでいた。だから、時折、あまりにも混み始めると狭い厨房は大混乱になる。3人で立っているだけで精一杯なので、バスク人のシェフの熱い性格は熱をますます帯びて、フランス人特有の辛辣さが出て来ることもたまにあった。

彼は、親分肌で、実はオテル・ド・クリヨンでシェフ・ド・パーティを務めてから、自分の店を20代の終わりで堂々とパリに、奥さんと一緒に開店させた。普段は面倒見がよくて優しいけれど、熱を帯びて来ると、ジャイアンのようになる。のび太君のような私は、ときどきシェフの話す早口のバスクアクセントのフランス語が分からず、ヘマをしては怒られては、悔しくて泣くということがあった。

でも、そこで働くのが楽しくて楽しくて、週に3日ほど行っていたのだが、その最後にシェフと奥さんが頑張ったご褒美として、ルドワヤンで白トリュフ三昧コース(シェフ同士やサービスの人たちまでも仲が良かったので、特別計らいで)をみんなでいただくことになったのだ。白トリュフは希少で、普通の黒いトリュフの2倍以上の値段なので、それがたくさん載ったコースをいただくことは、贅沢中の贅沢だった。

あのころは、一体、自分で何を夢見てみたんだろう。ただただパティスリーを習うことがうれしくて楽しい時代だった。それだけで十分だった。アメリカで自分のショコラティエを開くことだけを夢見ていた覚えがあるけれど。あのころは、パリでいろんなことを覚え、周りに刺激的なシェフたちがいることがうれしかった。まるでスポンジのようにいろんなものを吸収したものだった。

今は、どうなんだろう!?毎日の生活と仕事に追われ、借金を返すことだけで精一杯で夢はなんだろう?疲れて困難に思えることの方が多くて、あのころの何にもなくても生き生きとしていた自分が本当にまぶしく思える。そんなときに、Aさんから招待されたのだ。喝を入れ直さなくちゃ~!と思っていたところに、急にだった。

このランチ中に、彼女から「5年後のあなたは何していると思う?」と面接官のような質問を受けた。私はこの時、自分の2つめの目標を言ったけれど、ひとつめの大きな目標は言えなかった。今、自分の中ではある目標があるのだけれど、それは自分の頑張りとして取っておこうと思う。今の自分が恥ずかしくて(だらけているから)、彼女には正直に言えなかった。

もちろんロブションは、心地よいサービスもあるので、Aさんと一緒におしゃべりをしながらゆったりと過ごす時間は、日常のもやもやを晴らすいい機会だった。

robuchon3

太っ腹のAさんが私たちには、ムニュ・プレジール(Menu Plaisir)を勧めてくださったので、そちらをお願いした。ソムリエはセシルさん。頭脳明晰で、日本語も達者なのに奥ゆかしいという若いステキな女性。ちょうど、彼女のキラキラとした人を喜ばせたいという思いが伝わるサービス心が、若いころのパティスリーを全身で学びたいという自分の姿に重なって、勝手に彼女に共感を覚えた。彼女がまぶしく見えたのは、自分自身の夢が果たせるのだろうかという、今の私の臆病な姿とは裏腹だったからかもしれない。

318e80c5.jpg


まずは、アミューズ・ブッシュ。

eafd1e10.jpg


このミニバゲットが最初に供された。すご~く美味しかった!このオリーブオイルも爽やかでフルーティーで一目ぼれ。

e5352a6d.jpg


いろんなパンがワゴンでサービスされて、どれもこれも美味しかったです。

e4cb694c.jpg


特選生雲丹、甲殻類のジュレになめらかなカリフラワーのクリーム。このクラシカルな仕事ぶり。丁寧に。paniヴァンも、「昔、これをよくやった」と、感慨深げ。点々を付けるのは、コミ(Commis)の仕事。でも、大変な仕事でしょ。

da6c4439.jpg


フランス産フォアグラ、ポワレにし、パルメザンチーズのリゾットにのせて。リゾットが極旨!

4538771c.jpg


甘鯛 うろこ付きで香ばしく焼き、ユリ根と島根県益田市産柚子のナージュに浮かべて。甘鯛の皮が最高に美味しかったです。

86041cad.jpg


特選牛フィレ肉のトゥルヌード、 旬の野菜を添え、キャロットオイルと共に。

946081ff.jpg


チーズのワゴン。

5b6d6755.jpg


paniヴァンのチョイスのチーズ盛り合わせ。モンドール、18ヶ月熟成のミモレット(これは私が頼んだ)とフォルム・ダンベール、後は何だか忘れたけれど、うちに置いてある同じチーズが何種類か同じだったので、うれしくなった。写真がきれいじゃないのは、デジイチじゃないから。

robuchon13

グァバのグラニテとライチのジュレ、バラの香りでまとめて。

5947ffd1.jpg


マンゴー、胡椒をきかせたクーリーにし、プラリネのパルフェと共に。

3acde07f.jpg


ミニャルディーズは、和三盆のブリュレに抹茶のジュレ、ローズマカロン、そしてボンボンショコラ。

ba0c0afe.jpg


このひとつずつのコースにさまざまなワインをセシルさんがpaniヴァンとAさんのために選んでくださった。すべてパーフェクトチョイスで、素晴らしいものばかりだったそう。私はジンジャーエールだよ~

それにサプライズで、冒頭のお誕生日ケーキが運ばれた!すごいサプライズ!!!ホワイトチョコレートムースに中は、いちごのジュレ。ムースが最高に美味しかったの。

とても勉強になった素晴らしい3時間でした。Aさん、どうもありがとうございます。こういう機会はめったに与えられることではないので、心から感謝☆ 

さて、Aさんから与えられたこのチャンスと勉強を肥やしにして、さらに怠惰な心を引き締めて行かないとアカンね。セシルさんのようにキラキラした目を持つ自分に戻りたいな、って思えたのが収穫。

楽しいお菓子作り、夢作り、して行こう~♪


皆さんの応援ポチ、ありがたいです。このごろ応援ポチが激減で寂しいですので、よろしくお願いします~☆ どうもありがとう~!!!If you like my blog, please take a moment to click the below banners to show your support. Thank you!


    ninki-ranking にほんブログ村 スイーツブログ 手作りお菓子(個人)へ 

 お手数ですが、それぞれのアイコンを1日に1度、ポチポチしてくださいね。どうもありがとう!ランキングが上がるとやはり




****************************************


recipe-book


私のお菓子レシピ本が発売されました。ぜひ、手に取って見てくださいね。ベーシックを教えてくれるお菓子レシピ本はちまたにたくさんあるので、趣向を凝らしてあります。ちょっと変わったものもオーソドックスなものもあって、フランスの伝統菓子も、いろいろと。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

rainbow そして私、panipopoは、大手ラッピング・包装資材の専門会社Cotta*さんと提携を結んで、月に2回このブログには載せないレシピを掲載しています。 素敵なラッピングなどやお菓子作りには欠かせない容器や材料が揃っている会社ですが、私もよくブログで使ってます。


panipopo × cotta


*** 隔週で、cotta*さんで新しいお菓子のレシピを掲載しています。今回は、ちょっと本格的に出来るオレンジ・トリュフです。でも、作り方は簡単ですのでもし時間があったら、ぜひ作ってみてね。

 、cotta-orange-truffles

 





++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 そして、2月のお菓子便のためのネット・ショップはただ今オープン中です。2月1日(明日の夜、24時まで)までの1週間開けますので、よろしくお願いします。今回は、いろんなショコラ(ボンボンも含めて)、自信作のガトー・ショコラ(これ、私の大好きなもの)、シドニータルト(文句なしに美味しい!)、ロールケーキ、などなど。もちろん自家製酵母のパン便も☆ 


 panipopoのお菓子便